HOSPITAL STANDARD

コーナンが考えるキレイの基準

コーナンのノウハウと知見だからできる、院内環境における「キレイ」のスタンダード。

建物の中でも最も清潔さが求められる「クリニック」。アメリカで医療施設の清掃は“Hospital Standard”と呼ばれ、高い清掃技術と知識を必要とされます。私たちコーナンが提供するすべてのサービスには実績・経験だけではない確かな知識があります。クリニックの院内感染防止と清潔な環境に役立つ知見をご紹介いたします。

CDCガイドラインとは

CDC (米国疾病予防管理センター)の示す医療関連ガイドライン。院内感染防止に資する標準予防策についても定義しており、「スタンダードプリコーション」と呼ぶ。日本をはじめ国際的な基準として準拠が求められている。

スタンダードプリコーション

CDC (米国疾病予防管理センター)が考案
患者の病気、感染の有無にかかわらず、血液、全ての体液、汗を除く分泌物、排泄物、傷のある皮膚、そして粘膜が感染原因になりうるという考え
手指衛生、手袋・マスク・ゴーグル・ガウン等のPPE(個人防護具)などを使用し、自分自身を防御すると同時に拡散を防止する

目的

医療従事者を介して起こる交差感染から患者を守り、また患者が保有している病原体から医療従事者を守る

Basic Infection Prevention and Control Guidelines
https://www.cdc.gov/infectioncontrol/guidelines/index.html

感染対策の基本的な考え

感染とは微生物が体内に侵入し、生体内で定着・増殖し、寄生の状態になった場合をいう。
感染が成立するためには原因となる感染源、感染対象である感受性者、および両者を介する感染経路、この3要素が全て必要になる。
感染対策は、この連鎖を断ち切ることが基本にななる。

感染症とその効果

感染源に対する対策は、隔離や消毒、マスクの装着、治療などがある。しかし、すべての患者に隔離や消毒を徹底することは現実的ではなく、対策としては限定的。
宿主、感受性者の対策はワクチン接種や個室隔離などがあるが、MRSAや緑膿菌などワクチンが有効でない菌もあり、こちらも限定的。
感染経路については、標準予防策と感染経路別予防策が対策となり、他の2つに対して、日ごろ行っている行動であることから、対策が容易かつ効果が出やすいことが特徴。感染の連鎖を断ち切ることで院内感染を防ぐことができるため、感染経路を遮断する対策をメインにすることが効果的。

標準予防策とは

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が考案した予防策で、スタンダードプリコーションと呼ぶ。全ての人は伝播する病原体を保有していると考えのもと、患者の病気、感染の有無に関係なく、手指衛生の実施や手袋などを用い、自分自身を防御すると同時に拡散を防止するという考え方。

手指衛生

WHOの提唱する手指衛生での手洗い手順は以下の通りである。ポイントは「止水栓を止めるためタオル等を使う」というところに注意が必要。

WHO Guidelines on hand hygiene in health care
http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241597906_eng.pdf

標準予防策の種類

手指衛生
血液媒介病原体曝露防止
患者の配置・移動
環境整備
ケア器具および機器の取り扱い
リネン(布類)の取り扱い
咳エチケット
安全な注射手技
特別腰椎穿刺(せんし)処置での感染制御手技

感染経路別予防策

標準予防策の他に、感染経路別予防策も示されている。

接触感染
患者との直接接触や汚染された器具、または汚染した環境を介した間接接触により感染する。
予防策としては手袋の着用、手袋を外した後には必ず手洗い、手指衛生を行う。ケア、処置時は必要に応じてエプロンまたはガウンを着用する。共有する可能性がある器具は専用にするか消毒または洗浄をする。また個室の管理が望ましい。

飛沫感染
病原体を有する患者の結膜、鼻腔、口腔粘膜から排出される飛沫粒子(5μ以上)との接触によって起こる。飛沫は咳、くしゃみ、会話、気管吸引などにより空気中に排出されそれを人が吸い込むことで感染する。
予防策としては、標準予防策に加え、原則個室で管理する。室内を陰圧にする。患者には外に出ないように指導し、どうしても外に出る場合はサージカルマスクを着用してもらう。
カーテンなどによる空間分離を考慮する。感染者、非感染者の距離は最低でも1メートルはあける。患者の1メートル以内に接近する時はサージカルマスを着用するなど。

空気感染(飛沫核感染)
病原性のある飛沫が気化し、飛沫核といった小粒子(5μ以下)が長期間浮遊するか、飛沫核を含む粉塵が空気の流れによって広く巻き散らかされたことにより伝播され、それを吸引することにより感染する。
予防策としては出入りの手洗いを徹底する。適切な防護服を着用するなどの標準予防策に加え、原則個室で管理する。室内を陰圧にする。患者には外に出ないように指導しどうしても外に出る場合はサージカルマスクを着用してもらう。感染症専用の資機材を使用するなど。
また清掃部分で塵芥除去を徹底することで予防できる。

重複して対策
感染経路別予防策は接触感染予防策+飛沫感染予防策や、接触感染予防策+空気感染予防策など重複して対策がなされる場合もある。
コロナウイルスについても、日本感染症学会などの発表では、飛沫感染と接触感染を組み合わせることが推奨されている。

ゾーニングとは

清掃を含む環境整備は院内感染防止対策上、手洗いと同様に重要な予防対策の一つ。患者さまに安全・安心な環境を提供するために、病院・クリニックでは以下の3つの空間と病原微生物による汚染の可能性の度合いを考え、清潔管理のため、院内を高度清潔区域、清潔区域、準清潔区域、一般清潔区域、汚染管理区域の5区分し、ゾーニング別カラーコントロールにおける清浄度区分が重要となっている。

(a)医療施設に従事する健康者のための空間。
(b)外部より受診または加療のため、医療施設に出入りする非健康者のための空間。
(c)医療施設内に加療のため、居住する患者のための空間

環境表面分離

CDCは環境表面を、高頻度と低頻度の接触部表面の2つのグループに分類している。
高頻度接触表面とは、患者に最も近く最も汚染されている可能性のあるベッドなどの患者周辺の器具、PCのキーボード、スイッチなどを指す。 高頻度接触表面は感染経路になりやすいため、洗浄または消毒が必要。高頻度接触表面の洗浄・消毒は、最低1日1回以上の日常清掃または中水準以下の消毒薬を用いての消毒を行う。
低頻度接触表面とは、床や壁などを指すが、環境に存在する微生物と病院感染の関連性はほとんどないと考えられている。仮に消毒液で環境を消毒しても一時的に微生物数が減少するだけであり、人が存在する限り短時間で元に戻るため、床や壁などは定期的な日常清掃は必要ですが、日常的な消毒は不要となる。壁は汚染が見られた時に清浄化を行うようにする。

清掃の現状と運用について

医師・スタッフ問わず自院を清潔にしたいと考えているが、弊社クライアントのおよそ90%以上が、清潔とは言い難い状態。
理由は2つ。
清掃の基準がないこと、業者に指示が出せないこと。

基準がない

基準がないときれいにならない理由は、スタッフの主観によって基準が変わるため。
スタッフの性格にかかわらず業務量を増やさないよう、いかにポイントを絞って効率的に時短で簡単に清掃出来るかが重要。
だからこそ誰がどこをどのようにどれくらいの頻度で。というような基準・マニュアルが必要になる。

指示が出せない

定期清掃を依頼している業者は、指示が明確でなければきれいにならない。
床の清掃の場合、飲食店もクリニックも作業工程は同じだが、使い分けの指示がない場合、飲食店の床を洗浄した機材でクリニックの床も洗浄している業者も。
油まみれの飲食店で使った機材を医療施設で使うと、清浄度の維持という点で問題がある。
機材を洗ったとしても洗剤や油の残留がゼロにすることは困難なため、使い分けが望ましい。

モップがけも同様で、清浄度の異なるエリアを一本のモップで拭いてしまう業者がある。
菌レベルでいうと汚染を拡散させているため、モップ1つにとっても、使い分けるよう指示する必要がある。

優先順位もきちんと指示が必要。
美観という点で床の清掃は重要だが、感染という観点からは高頻度接触部位の清掃の方が重要だからである。
高頻度接触部位である手すりやドアノブ、キーボードを清掃していても、点滴棒やカートは見落としがちなため、床掃除よりも接触感染の感染経路を遮断する方を優先すべき。

高所部分も清掃は必要。
ほこりにノロウイルスが付着し、放置しておくと、エアコンの風で空気中にほこりが舞い感染リスクが上がるためである。
しかし、高所部分を日常清掃しようと脚立を使うとなると、落下のリスクがあり日常では難しいのが現状。
日常清掃では出来ないところこそ外部の業者に委託するべき。

患者目線のクリニックとは

医療機関として清潔を維持することは感染防止の観点から重要だが、ブランディングや増患の観点からも重要である。
病院の選び方についてのリクルートのアンケート調査では、同じ病院を利用したいと思うポイントとして清潔感が35%。
逆に同じ病院を利用したくないポイントとして、衛生面が不十分が37.7%という結果がある。
患者は、クリニックは「清潔で当たり前」という前提で来院していることが分かる。
そのため、清潔な医院だという安心感を与えることで、感染と増患対策につながる。

五感を満足させる

患者は当然何か健康状態に不快を感じており、医院ではその不快さを解消できるように五感すべてに訴えかける準備が必要。
結果的に清潔な医院としてブランディングされ、増患につながる。
整理整頓も同じく重要。
診察室では医師のの肩ごしに後ろを見ているため奥の棚の上が見えたり、会計では受付の中が散らかっている様子が見えたりする
待合に飾っている絵の額や認定証などが歪んでいるだけで良くない印象を与えてしまう。

1.嗅覚。
スタッフは自院のにおいに気づきにくいが、消毒薬やトイレのにおいが漏れている場合や、換気扇の吹き出し口のすぐ横に空調の取り入れ口があり、換気できていない場合もある。

2.聴覚
患者は待合で待っているときや点滴中などは聴覚がとても鋭くなっている。
器具をガチャガチャと取り扱う音、スタッフ同士の話し声、テレビやBGMの音量や先生の説明の声、患者を呼ぶ声などがよく聞こえている。

3.視覚
清潔であることが大前提。
チェック方法として、患者目線を試すとよい。
窓の桟のほこりや棚の上のほこり、床のヒールマーク、蛇口や鏡の汚れなどいろいろ見えてくる。
特にトイレは最も注意が必要。
床面が少し濡れているだけで、女性は不潔と判断するからだ。

4.味覚
口の中に入れる舌圧子は味はしないが、患者からしたら嫌な味かもしれない。
例えば、先に「冷たいですが」「ちょっと気持ち悪いかもしれませんが」など声かけすることによって不快感を減少させるアプローチが有効。
薬に関しても、「この薬はちょっと苦いかもしれませんが」「この薬はほとんど味がしないようです」などと付け加えると、味覚にも優しい医院になる。

5.触覚
スリッパ裏の破れやスリッパ内部のほこり、床の砂粒のザラザラ。
聴診器の肌に当たる時の感触や検査時に塗るジェルの冷たさ。注射針の痛さ、トイレの手洗いの蛇口の清潔感や空調の効きすぎなど多くある。

他にも五感を満足させるアプローチ
BGM:一定のリズムがシンプルに流れる曲は循環器系が安定する。3拍子は上品な感じ。ボサノバは大人が楽しく感じる。単体のオルゴール。
椅子の配置:移動の際通りにくそうにしていないか。配置を変えてみる。
雑誌:読み物は充実してるか。男性と女性の割合に応じた本の種類か。雑誌等に集中させることで体感的な待ち時間を短く出来る。